離婚届と公正証書、
どっちが先?
後悔しない
手続きの順番とは
「離婚届と公正証書、どちらを先にすればいいですか?」そうしたご相談を受けることがあります。実はこの順番、あとになって大きな差が出ることもある大切なポイントです。この記事では、後悔しないための手続きの流れや、公正証書を先に作成しておくメリットについて、分かりやすく解説していきます。
離婚前に公正証書を作るべき3つの理由
離婚届より先に、公正証書を作っておく。
この順番は、法律の専門家のあいだでも広く推奨されています。
なぜなら、離婚後は相手の協力が得られにくくなるからです。
① 離婚が成立すると「もう終わった」という意識になる
離婚届を出してしまった後では、相手にこう言われることがあります。
- 「もう離婚したんだから、これ以上書面なんていらないでしょ?」
- 「強制執行ができる公正証書なんて、俺にとってはデメリットしかないよ」
すでに離婚が成立してしまっていると、相手にはもう書類を作る義務はない、という態度を取られることも少なくありません。
離婚前であれば、「きちんと書面を交わしてからでないと離婚しない」という交渉が可能です。
相手も「離婚をスムーズに成立させたい」という目的があるため、比較的協力的な姿勢になりやすいのです。
② 条件の“後出し交渉”が始まるリスクも
離婚後に「やっぱり公正証書を作っておきたい」と申し出ても、こんなふうに言われてしまうことがあります。
- 「それなら養育費を減らして」
- 「慰謝料減額してくれるなら、行ってもいい」
つまり、公正証書を作るには相手の同意が必要です。
すでに離婚が成立してしまっている以上、相手には「協力するメリット」がなくなっている状態です。
一方、離婚前であれば「公正証書を作ることが離婚の条件」として交渉できるため、相手も応じやすくなります。
つまり、公正証書の作成は「離婚が成立する前」に進めておくほうが、スムーズに合意を得られることが多いのです。
離婚が成立した後では、「譲歩してでも作ってもらうしかない」という不利な立場に追い込まれてしまうこともあるのです。
③ 公正証書を後回しにして後悔したケースも
「とにかく早く離婚したい」
「話し合いも限界…とにかく離婚届を出して終わらせたい」
そう思って離婚届を先に出してしまった結果、公正証書の作成がうやむやになってしまうケースは少なくありません。
実際にあったご相談では、
- 離婚届を出した後、元夫が「もう他人なのに、わざわざ公証役場に行く必要はない」と拒否
- 養育費は払うと言っていたのに、数ヶ月後から未払いに
- 書面がないため強制執行ができず、弁護士に依頼して裁判 → 時間と費用がかかった
というケースもありました。
公正証書は、相手の同意がなければ作成できない書類です。
離婚後は、その“同意”を得るのがとても難しくなることがあります。
だからこそ、離婚届を出す前に、公正証書をしっかりと作っておくことが大切なのです。
離婚届を先に出すケースもある
原則としては「公正証書 → 離婚届」の順番が望ましいですが、やむを得ず離婚届を先に出すケースもあります。たとえば、以下のような事情がある場合です。
- 子どもの保育園や学校の手続きに「離婚後の世帯」が必要
- DVや精神的虐待などで、すぐに別居・離婚が必要な状況
- 同居生活が限界で、早く戸籍上の縁を切りたい場合 など・・・
このような場合には、先に離婚届を提出した後でも、公正証書の作成に進めることは可能です。
ただし、離婚後に条件をめぐって揉めるケースは少なくありません。
どうしても先に離婚届を出さなければならない場合でも、離婚協議書だけでも先に作成するか、最低限、当人同士で合意した条件を簡単でもよいので書面にしておくことを強くおすすめします。
あとから「そんな約束していない」と言われた場合の備えとして、書面の有無は非常に重要です。
まとめ|離婚届より前に公正証書を
離婚後のトラブルを避けるためには、「離婚届を出す前に、公正証書を作っておくこと」が非常に大切です。
離婚届を先に出してしまうと、
- 「もう離婚したんだから作らなくていいでしょ」
- 「慰謝料を減らしてくれるなら、公正証書にしてもいいよ」
- 「強制執行ができる書類を作るメリットが自分にはない」
といった言い分で、相手が協力しなくなることもあります。
離婚前であれば、相手に「協議がまとまらなければ離婚できない」という緊張感があり、公正証書作成にも前向きになりやすいのです。
また、公正証書を作成しておくことで、裁判を経ずに差押えができる「強制執行力」を持たせることが可能になります。これは、養育費や慰謝料など、金銭に関する取り決めを確実に実行させる上で、大きな支えとなります。
離婚は、将来に大きく関わる判断だからこそ、冷静な準備が欠かせません。
感情的になりやすい時期だからこそ、冷静に「書面で備える」ことが、未来の自分と子どもを守る大きな力になります。